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介護男子スタディーズプロジェクト

介護は新しい科学であり、とてもクリエイティブな仕事です。
介護に内在するクリエイティビティは、介護の実践だけでなく、広く社会や学問のあり方を変える示唆をも与えてくれます。
介護は、そのとき、その場で行われる一回性のものであり、深い思考力が必要とされ、全体性や対象との対話が重視されます。対象をコントロールし再現可能性を重視する近代科学よりも、むしろその創造性と即興性は芸術の領域に近く、文化人類学者のレヴィ=ストロースが「ブリコラージュ」と呼んだものと重なってくるでしょう。そして、こうした介護を、新しい「科学」として確立していく必要があります。
こうした「介護」とのつながりを求めて、世の中にはさまざまな学問、技術、ビジネスが「浮遊」しています。この「浮遊」するものを確実に引き留め、イノベーションにつなげることが、いま介護の現場に求められています。イノベーションの主体は「介護」なのです。

「介護」という言葉を耳にすることは多くなりましたが、その実態や真相についての議論はまだ十分ではありません。
本プロジェクトでは、「介護男子」に焦点を当てました。介護をする男性、つまり「介護男子」は歴史的な存在です。同時に、これからの介護の現場を担うであろう重要な存在です。ただしこのプロジェクトは、単に「介護男子」を礼賛したり、介護の現状を美辞麗句で糊塗するようなものではないことを、はっきりと申し上げておきたいと思います。

日本で介護の仕事に従事する人のうち、約8割が女性で、訪問介護に限れば9割を超えているという実情があります。だからこそ、男性が快活に働いている姿を発信することは、社会的な議論を惹起し、みなさん一人ひとりの「介護」に対する既成概念や印象、評価を変えるきっかけとなると考えました。もし氾濫する○○男子(○○女子)という言葉に陳腐さが滲むとすれば、それは、もはや「介護男子」に注目するまでもなく、仕事(または、職業)に対する近代社会のジェンダー規範に転換が起きていることを意味しているのかもしれません。
そもそも、介護は人間存在の基底に深く関わっており、女性にせよ、男性にせよ、誰にとっても等しく不可避なテーマであることには間違いありません。

本プロジェクトに登場する全国20名の介護男子を切り撮った写真は、意外とも思える領域に及ぶ彼らの仕事ぶりを伝え、さらには介護という仕事に対する責任感や矜持までを雄弁に物語っています。
同時に、多彩なジャンルの識者による論考で介護をひもといていきます。介護の現状をさまざまな角度から分析、解釈を試み、介護の未来を考えるための新しいヒントやアイデアを提言しています。

介護は、人と人の間に存在するものです。それゆえ、「遊び」と「本気」が接近、交錯しながら展開されていく不思議な営みでもあります。だからこそ、そこにはクリエイティブかつイノベーティブ、そして、終わりのなき深淵な世界が広がっているーー これからの世代にとって、介護は「豊かな」働き方を提示してくれると確信しています。

介護男子スタディーズプロジェクト